設立趣意書

 居宅は生活を営む上で必須の基盤である。憲法25条で保障された健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障するうえでも,すべての国民に,その必要に応じた適切な居宅が提供されなければならない。

 一方で,障害者,高齢者,生活困窮者,DV被害者など地域の中で居住すべき適切な住居を見つけることや地域の中での生活を継続していくことに困難を抱えていて支援を必要とする方々(以下,居住要支援者,という)が存在する。賃貸物件に空室があっても,貸主側の不安などの理由で賃借できないこともある。

 居住要支援者に対しては,居住支援,すなわち,地域の中で居住すべき適切な住居を確保するための支援(入居支援)や地域の中での生活を継続するための支援(地域生活支援)が,必要に応じて適切に提供されなければならない。

 我が国の施策においては,障害者,高齢者,生活困窮者,DV被害者といった様々な対象者に対して,様々な居住支援が実施されている。しかしながら,これらの施策は対象者や要件を限定しているため,制度のすき間に陥った居住要支援者には必要な支援が提供されていない状況を生んでいる。

 また,各地の地方公共団体に設置された居住支援協議会,社会福祉法人,NPO法人等が分野横断的な居住支援を実施している例もある。しかしながら,現状では,あくまで一部の先進的地域で進んだ取組みが行われているに過ぎず,ほとんどの地域ではこうした支援が提供されてはいない。

 さらに,我が国には,賃貸借契約にあたって連帯保証人を求めるという慣習があり,そのために『身寄り』がないか少ないがために連帯保証人を確保できない居住要支援者は,居住すべき適切な住居を確保できないという問題(以下,連帯保証問題,という)を抱えることになる。連帯保証問題の解決に向けた施策はやっと検討が始まったところである。

 他方,一般的な独立した居宅における生活が困難な方々に対して提供される一定の支援・サービス等をともなう住居(サービス付き高齢者向け住宅や障害者向けのグループホームを含む,以下,支援付き住居,という)に関しては,施設化や囲い込みの危険,サービスに対する対価の在り方,貧困ビジネスの存在等,様々な課題が存在する。

 以上のような現状認識に立って,われわれは,全国のあらゆる地域において,障害者,高齢者等あらゆる居住要支援者に対して,連帯保証問題の解決を含め,必要に応じて適切な居住支援が提供される社会を創造するため,全国各地のそれぞれの地域において居住支援を提供している団体(支援付き住居による居住支援を提供している団体を含む)が,居住支援の普及及び発展を目的とする活動を行うとともに,情報交換,交流,相互啓発,研究,調査,啓発活動等を行い,もって,社会の福祉の増進に寄与することを目的として,ここに「居住支援全国ネットワーク」を設立する。

2017年(平成29年)2月18日